明るい曲に一瞬の陰りを加える:借用和音のFmと♭VIを試そう

明るい鍵盤から青紫の陰へ変わる、借用和音で曲に陰りを加えるイメージ blog

明るい調の曲を作っていて、終わりの一瞬だけ違う表情を加えたいことがある。コードをすべて替えなくても、同じ主音を持つ短調から一つの和音を借りると、短い陰りを作れる。これが借用和音を試す入り口である。

本記事ではハ長調を基準に、FmとA♭を使う。曲全体を別の調へ移す練習ではなく、Cを帰る場所として保ちながら、一部の響きへ調外の音を加える練習である。感情の名前を先に決めず、どの音が変わったかを耳とピアノロールで確認する。

同じ主音の長調と短調を比べる

ハ長調の音階はド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シである。比較に使うハ自然短音階はド・レ・ミ♭・ファ・ソ・ラ♭・シ♭となる。主音のドは共通だが、いくつかの音が変わる。この違いを含む和音を、長調の文脈へ持ち込んでみる。

まず、ピアノでC、F、G、Cを一小節ずつ鳴らす。ここではメロディーを入れず、始まりと終わりのCが落ち着く場所として聞こえる状態を作る。テンポはゆっくりでよく、各コードの響きが切り替わる瞬間を聴き取れることが大切である。

同主調からの借用は、一時的な色の変化として使え、必ずしも転調を意味しない。借用と新しい調の確立を分ける考え方は、Open Music TheoryのModal mixtureで説明されている。ここでは、Cへ戻ることを練習の条件にする。

FからFmへ変わる一音を見つける

Fはファ・ラ・ド、Fmはファ・ラ♭・ドである。まずFを二拍、Fmを二拍鳴らし、次の小節でCへ戻す。変わるのはラがラ♭へ下がる部分である。和音を大きく跳ばすより、この一音だけを目立つ高さに置くと、変化を聞き取りやすい。

伴奏の上側にラ、ラ♭、ソという流れを作ってみる。低音をファ、ファ、ドとして保てば、上の半音の下降がCへの帰着を支える。これは練習用の一例であり、同じ和音名でも配置を変えれば印象は異なる。

さらに、FからFmへの変更を最後の一拍だけに縮める。二拍かけた版より短い陰りになり、余韻として聞こえることがある。逆に一小節伸ばすと、その和音が場面の中心になりやすい。借用する和音の種類だけでなく、滞在する時間も調整したい。

♭VIは低音の移動も変える

ハ長調を基準とする♭VIの練習には、A♭の和音を使う。構成音はラ♭・ド・ミ♭である。低音もドからラ♭へ動くため、FをFmへ替えた例とは変化の範囲が異なる。C、A♭、F、G、Cという短い流れを作り、Cとの距離を聴いてみる。

ローマ数字の♭VIは、主音から数えた第六音の位置を下げた和音を表す。ここでの表記はハ長調を基準にしており、すべての調でA♭になるわけではない。別の調で試すときは、音名をそのままコピーせず、その調の主音から関係を考える。

A♭の響きを使うとき、すべての構成音を必ず同じ強さで鳴らす必要はない。低音のラ♭を控えめにし、共通するドを上に残す版と、ラ♭をはっきり打ち出す版を比較する。共通音を残すか、低音の変化を目立たせるかで接続の感じが変わる。

旋律が合わないときは一音ずつ調べる

伴奏をFmにした瞬間、旋律がラを長く伸ばしていると、伴奏のラ♭との近接が強く聞こえることがある。これを機械的に間違いと決める必要はないが、狙っていない衝突なら修正する。まず旋律のラをラ♭へ替え、元の版と比較する。

旋律を変更したくなければ、Fmを置く時間をずらす方法もある。旋律がラを離した後に借用する、旋律の休符へ置く、短い経過部分だけに使うといった選択肢を試す。コードと旋律のどちらを主役として残すかが判断の基準になる。

一つの借用和音を導入しただけで、前後の全コードを短調へ替える必要はない。FからFm、Cへの短い動きなら、戻ったCとの対比が特徴になる。修正の範囲を小さく保つと、借用した一音の効果を学びやすい。

四小節の中で借用する時間を決める

具体的な打ち込みでは、一小節目をC、二小節目をF、三小節目の前半をF、後半をFm、四小節目をCにする。最初は低音を各和音のルートにし、上の伴奏も長く伸ばすだけにする。借用した部分がどこなのか、再生しながら指で示せる程度に単純な形を用意する。複雑なリズムや転回形を加えるのは、その後でよい。

次に、三小節目のFmを最後の一拍だけに縮める版を作る。伴奏の切替が短くなるほど、メロディーが同じでも通過する色として聞こえやすくなる場合がある。一方、二小節目からFmを使う版では、陰りが曲の中心へ近づく。使う和音が同じでも、いつ現れ、どれほど続くかで役割が変わることを確認したい。

比較ではFmの部分だけをループせず、一小節目から四小節目まで通す。短三和音単独の響きと、長調の文脈へ短三和音が入る変化は別の聴き方になる。借用前の明るい響きと戻った後のCを一緒に聴くことが、変化の大きさを判断する助けとなる。コードを切り替えた瞬間だけで結論を出さない方がよい。

ラ、ラ♭、ソの線を三つの位置で試す

FからFm、Cへ進む例で、ラ、ラ♭、ソを最上声に置くと、半音で下がる線が聞こえやすい。次に、この三音を内声へ移し、上のドを共通音として伸ばしてみる。和音の種類は同じまま、目立つ旋律と背景の色のどちらとして聞かせるかを変えられる。最上声の変化が大げさに感じられる場合には、内側へ置く方法が候補となる。

三つ目の版では、ベースにファを保ったままFからFmへ移り、Cに戻る瞬間だけドへ動かす。低音の動きが少ないため、上の一音の変化へ注意を向けやすい。ここで低音までラからラ♭へ動かす版を作ると、コードの転回や重心も変わる。どちらも試せるが、一音の色と低音の進行を別々の要素として比較することが大切である。

これらを音色の違いで比較しないよう、最初は同じピアノで作る。その後、内声だけを柔らかなパッドへ任せる、下降する最上声を弦で伸ばすといった編曲へ広げられる。音色を替えると余韻や目立ち方も変わるため、和音だけで決めた強さをそのまま使わず、旋律が主役として残っているかを聴き直したい。

A♭から先へ進むときの声部を考える

A♭からGへ進む場合、上の和音をラ♭・ド・ミ♭からソ・シ・レへ動かすと、三つの音がそれぞれ半音ずつ下がる。低音もラ♭からソへ進めば、全体として下降の方向がそろう。これをGからCへつなぎ、下がる流れと帰着する流れがどう聞こえるかを確認する。音名と移動幅が分かる、練習しやすい配置の一つである。

ただし、声部をすべて同じ方向へ動かすことが、あらゆる様式での規則というわけではない。ここではポピュラー音楽の響きを比べるための例として扱う。主旋律が上昇しているなら、伴奏の下降と逆向きの動きが生まれる。両方が大きく動いて忙しく感じられたら、旋律を一音伸ばす、伴奏の変化を短くするなどして、目立つ動きを選ぶ。

A♭の後にすぐCへ戻す版も作れる。両方に含まれるドを同じ高さへ残し、ほかの音だけを動かすと、調外の和音でも共通点が聞こえる。A♭からGを通る版と比べれば、帰着の手前に段階を作るか、色から直接元の場所へ戻るかという違いを感じられる。コード名の珍しさではなく、接続の時間の使い方を評価したい。

別の調で、同じ関係を探す

ハ長調の例を理解したら、ト長調でも試してみる。ト長調のIVはCであり、その三度のミをミ♭へ下げたCmを借りれば、G、C、Cm、Gという流れを作れる。この場合、先ほどのラ、ラ♭、ソに相当する下降は、ミ、ミ♭、レとなる。音名が変わっても、長三和音の三度を半音下げる関係は共通である。

同様に、ト長調を基準とする♭VIはE♭となり、構成音はミ♭・ソ・シ♭である。A♭という名前だけを覚えてどの調にも当てはめると、狙った借用と違う関係になる。最初は主音を書き、その調の六番目の音を確認してから半音下げる。記号と実際の音を対応させる作業を挟むと、移調しても迷いにくい。

仕上げには、借用しない版と借用する版を曲の中で切り替え、どちらが言葉や場面に合うかを選ぶ。同じFmでも、静かな終わりで使う場合と、強いドラムの上で使う場合では印象が違う。「悲しくするコード」と固定して覚えるより、変わった一音と、その前後に残る音を意識して使う方が、表現の幅を広げられる。

借用の場所を譜面と耳の両方で残す

気に入った版ができたら、コード名の下へ変わった音を書き添える。FからFmならラからラ♭、CからA♭ならミからミ♭など、聞き取った変化を記す。どの音を残したかも分かれば、同じ進行を別の音域で作る際の手掛かりになる。「陰りが出た」という感想だけでなく、実際のノートの関係を記録することが、再現できる技術へつながる。

その後、借用する箇所を一つ前の小節へ移した版を聴いてみる。曲の終わりで効果的だった和音が、旋律の途中では強すぎることもある。合わなければ元へ戻し、理由を旋律との重なり、低音の動き、持続時間の三点から探す。借用和音を増やすことより、置くべき一か所を選ぶことに慣れると、曲の流れを保ちながら色を変えやすくなる。

一つの終わり方から曲へ広げる

練習の仕上げとして、四小節の終わりを三通り作る。一つ目はFからC、二つ目はFからFmを経てC、三つ目はA♭からGを経てCとする。メロディーは着地のドを共通にし、その直前だけを各和音に合わせる。

三つを順番に聴き、どの終わり方が曲の場面に合うか選ぶ。借用和音を使った版が必ず優れているわけではない。明快さが必要な場面では、元の進行の方が目的に合うこともある。

借用和音の面白さは、調の外の音を無制限に増やせることではない。帰る場所が分かる中で、短い変化を聞かせられることにある。まず一音、一拍、一つの和音の変更から始めると、響きの陰りを偶然ではなく自分の判断で配置できるようになる。

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