曲を作りたい気持ちがあっても、音楽理論の用語を調べるうちに手が止まることがある。調、音階、和音、機能といった知識は役立つが、すべてを理解してからでなければ作曲できないわけではない。短い伴奏を鳴らし、その上にメロディーを置く作業から始めれば、理論を音として確かめられる。
本記事ではC、G、Am、Fという四つのコードを使い、ドラム、ベース、伴奏、メロディーから小さな一曲を組み立てる。これはどの曲にも合う唯一の正解ではなく、最初の制作を最後まで通すための練習例である。鍵盤を演奏できなくても、DAWのピアノロールへの入力で進められる。
まずはテンポと長さを決める
新しいプロジェクトを作り、拍子は四分の四、テンポは試しやすい例として毎分90拍程度に設定する。速さに決まりはないため、聴いて落ち着かなければ変更してよい。最初から細かなテンポの正解を探すより、四拍を数えながら音を置ける速さを選ぶ方が作業を進めやすい。
最初の素材は四小節とする。一小節ずつC、G、Am、Fを配置し、それを繰り返して八小節へ広げる。短い単位なら変更した結果をすぐ聴けるため、どの音が雰囲気を変えたかを把握しやすい。
プロジェクトには名前を付け、入力を始める前に保存する。以後は節目ごとに保存し、大きく変更するときは別名で残す。初めての曲では作曲と同時に操作も覚えるため、戻れる状態を作ることが集中を助ける。
四つのコードを三音ずつ入力する
コードは複数の音を同時に鳴らすまとまりである。ここではCをド・ミ・ソ、Gをソ・シ・レ、Amをラ・ド・ミ、Fをファ・ラ・ドとして入力する。英字ではそれぞれC・E・G、G・B・D、A・C・E、F・A・Cになる。
DAWのピアノロールでは、縦方向が音の高さ、横方向が時間を表すことが多い。三つの音の開始位置を小節の頭へそろえ、長さを一小節分にする。四つの和音を順番に鳴らし、まずは音の変化だけを聴く。音色は、輪郭の分かるピアノなどが確認しやすい。
音名の横に表示されるオクターブ番号は、DAWや設定によって表記が異なる場合がある。番号をそのまま合わせるより、中央付近の弾きやすい高さを目安にし、実際の音を聴いて確認する。低すぎて濁る場合は伴奏全体を一オクターブ上げて試すとよい。
音の並べ方で伴奏の動きを小さくする
和音は、構成する音が同じでも配置を変えられる。例えばCの後のGを、ソ・シ・レの順ではなく、シ・レ・ソの並びにすると、前の和音から各音が大きく跳ばずに移れる場合がある。こうした配置の変更を転回と呼ぶ。
練習例として、Cはド・ミ・ソ、Gはシ・レ・ソ、Amはド・ミ・ラ、Fはド・ファ・ラのように、中央付近へ収めてみる。それぞれが元のコードと同じ構成音であることを確かめ、最初の配置と聴き比べる。音の移動が小さくなると、滑らかな伴奏を作りやすい。
ただし、滑らかさが常に目的とは限らない。大きく上がる配置が高揚感に合う場合もある。初めは同じ進行で二通りを作り、どちらが曲の雰囲気に合うかを判断する。理論の言葉は、その違いを説明する手掛かりとして使えばよい。
ベースは各コードの土台を一音で作る
別のトラックにベース音源を用意し、Cの小節ではド、Gではソ、Amではラ、Fではファを入力する。これらは各コードのルートと呼ばれる音である。伴奏より低い高さに置き、一小節ごとに鳴らせば、和音の土台を確認しやすい。
最初は複雑な動きを加えず、一拍目から長めに鳴らす。音が長すぎて次のコードへ重なる場合は、ノートを少し短くする。音源によっては音符を離してからも音が続くため、見た目の長さだけでなく実際の響きも確認する。
慣れてきたら、一小節を二つや四つの音に分ける。同じ音を繰り返すだけでもリズムが生まれる。新しい音を増やす前に、ドラムのキックと同じ位置で鳴らす場合と、間に入れる場合を比較すると、ベースが担うリズムの役割を理解しやすい。
ドラムは少ない音で拍を支える
四分の四拍子の練習では、キックを一拍目と三拍目、スネアを二拍目と四拍目に置く方法から始められる。ハイハットを八分音符で並べれば、拍の間も感じやすくなる。これは基本的な練習パターンであり、ジャンルに応じて変えてよい。
ドラム音源では、ピアノロールの各鍵盤に割り当てられる楽器が音源ごとに異なる場合がある。音名を暗記して入力するより、鳴らしてキック、スネア、ハイハットの位置を確認する。音が高い位置にあるから高い楽器とは限らない点にも注意したい。
すべてを同じ強さにする必要はない。ハイハットは表拍を少し強く、間の音を少し弱くするなど、二種類の強さから試す。ドラムがメロディーを隠すなら音量を下げる。音数を増やすより、曲の拍が分かり、伴奏と一緒に聴けることを優先する。
メロディーはコードの音を着地点にする
メロディー作りでは、まず四つの和音の構成音から短いフレーズを作る。Cの小節ならド、ミ、ソ、Gの小節ならソ、シ、レが候補になる。すべての音を使う必要はなく、一つの音を繰り返すだけでもリズムによって旋律の形は生まれる。
各小節の最初や、長く伸ばす音をコードの構成音にすると、伴奏との関係を確認しやすい。音と音の間には、ハ長調のド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シを使って動きを加えられる。ただし、白鍵の音ならいつでも安定するわけではない。伴奏との重なりを聴き、違和感のある音の高さや長さを変えてみる。
例えば一小節目をミ・ソ・ミ、二小節目をレ・シ、三小節目をド・ミ・ラ、四小節目をラ・ファとする。これは作業を始めるための仮の素材である。四分音符と二分音符を中心に置き、音のない時間も残すと、音程を増やさなくても呼吸のあるフレーズになる。
同じフレーズを少し変えて八小節にする
四小節の素材ができたら複製し、後半だけを少し変える。最初の三小節は同じまま、最後の小節のリズムや終わる音を変えると、繰り返しの中に区切りが生まれる。全体を毎回作り直すより、どこを変えたかが明確になる。
曲の途中では続きがありそうな終わり方、最後では落ち着く終わり方を試す。今回の例なら、最後にCの和音を一小節加え、メロディーもドやミなどに着地させる方法がある。ただし、終止感は音程だけでなく、音の長さ、強さ、間によっても変わる。
鼻歌でフレーズを確かめる方法も有効である。息が続かないほど音が詰まっているなら、休符を増やす。歌える旋律を作る練習では、鍵盤上の形だけでなく、実際に口ずさめるかが判断材料になる。声域に合わせる必要がある場合は、曲全体の高さも調整する。
音数を変えて短い一曲へ広げる
八小節をずっと繰り返すだけでは、同じ状態が続きやすい。そこで、四小節のイントロ、八小節の前半、八小節の後半、四小節の終わりという小さな構成を作る。長さの正解はないが、各部分の役割を決めると完成へ進めやすい。
イントロでは鍵盤だけ、前半ではベースと控えめなドラム、後半ではすべての音を鳴らす。終わりではドラムを抜き、和音とメロディーを残す。同じ進行でも参加する楽器を変えれば展開を作れる。新しいコードを大量に覚える前にも、できる工夫は多い。
伴奏を変えるなら、前半は長い和音、後半は一拍ずつ刻む形を試す。音の高さを変えなくても、リズムが変わると印象は変わる。変更を一度に増やさず、楽器の参加、リズム、音域を一つずつ調整すると、効果を判断しやすい。
行き詰まったら変更する場所を一つに絞る
メロディーが思いつかないときは、音程とリズムを同時に考えない方法がある。まずミなど一つの音だけで、長い音と短い音、休符を組み合わせる。そのリズムが気に入ったら、いくつかの音を上げ下げする。二つの要素を分けると、何もない状態からすべてを作る負担を減らせる。
和音が合っていないように感じるときは、メロディーの長い音と伴奏の構成音を照らし合わせる。一瞬だけ通る音と、強い拍で長く伸ばす音では聞こえ方が違う。すぐコード進行を全部変えるより、問題を感じた音だけ短くする、近くの構成音へ動かすといった小さな修正から試すと、原因を把握しやすい。
伴奏が単調なら、コードの数を増やす前に、同時に鳴らした三音を順番に鳴らす方法もある。ド・ミ・ソを一音ずつ並べるアルペジオにすると、同じ和音から動きが生まれる。ただし、旋律まで細かく動いている場合は忙しくなりやすいため、片方を単純にすると役割を分けられる。
練習を繰り返すときは、同じ四つのコードで落ち着いた曲と明るい曲を作り分けてみる。テンポ、ドラム、音色、旋律の高さを変えるだけでも印象は動く。コード進行だけが曲の個性を決めるわけではないことを、実際の音として確かめられるのである。
書き出しと聴き直しで次の課題を見つける
最後に各トラックの音量を整える。まずメロディーが聞き取れる位置を決め、ベースとドラム、伴奏を合わせる。全体の出力でクリッピングが起きるなら音量を下げる。初めての曲では、複雑なミックス処理より、各音が無理なく共存する状態を優先したい。
音声ファイルへ書き出したら、DAWを閉じた状態でも聴く。冒頭が切れていないか、終わりの残響が途切れていないか、音量の急な変化がないかを確認する。気になった点は一度にすべて直さず、例えばメロディーの最後とドラムの音量など、二つ程度に絞る。
コード名を覚えるだけでは分からなかったことが、完成した音から見えてくる。伴奏が低すぎる、ベースが長すぎる、旋律に休符が必要だといった発見は、次の学習テーマになる。四つのコードは作曲の限界ではなく、音を組み合わせて判断するための出発点なのである。

