4/4拍子で曲を作ることに慣れると、拍子の設定を変えるだけで違う雰囲気が出ると思いがちである。しかし、拍子は音符の数だけでなく、音をどのまとまりで感じるかに関係する。6/8拍子を試すなら、八分音符を六つ並べるだけでなく、三つずつのまとまりを耳で確かめたい。
本記事では同じ数の八分音符を使い、6/8拍子と3/4拍子を打ち込みで比較する。楽譜の読み方を一度に覚えるのではなく、ドラム、ベース、メロディーを順に足して、二つの拍子の感じ方を体験する方法である。比較用の音源はDAWに付属するもので十分である。
六つの八分音符をどうまとめるか
6/8拍子は一般に、八分音符三つを一つの大きな拍として感じる複合二拍子である。「いち・と・と、に・と・と」のように、二つの大きな動きの中へ三つずつ細かい音が入る。楽譜上の分母が8でも、すべての八分音符を同じ重さで感じる必要はない。
3/4拍子は一般に、四分音符を三つの拍として感じる単純三拍子である。八分音符で細分すると「いち・と、に・と、さん・と」となり、二つずつのまとまりが三回続く。どちらも一小節に八分音符が六つ入るが、自然な区切りが三つずつか二つずつかで違いが生まれる。
この違いは絶対的な演奏規則ではない。曲によってアクセントをずらしたり、両方のまとまりを重ねたりすることもある。まず基本形を聞き分けてから意図的に崩すと、六つの音を適当に強弱付けするより、狙ったリズムを作りやすくなるのである。
比較では八分音符の間隔をそろえる
最初の実験では、二つのプロジェクトで八分音符の間隔を同じにする。DAWが四分音符を基準にテンポを扱う場合、両方を四分音符毎分90拍にすると比較しやすい。ただし、拍子に応じて表示やメトロノームの単位が変わるDAWもあるため、音符の実際の間隔を確認する。
四分音符が毎分90拍なら、八分音符一つは約0.333秒である。六つで一小節は約2秒になる。6/8拍子で大きな拍となる付点四分音符は、八分音符三つ分なので約1秒である。この条件では大きな拍が毎分60回となり、表示上の90という数字と体感の拍は同じではない。
6/8拍子の「テンポ60」が何を指すかは、付点四分音符を基準にする譜面と、四分音符基準のDAWで食い違うことがある。共同制作では数値だけを伝えず、基準の音符や一小節の秒数も添えるとよい。本記事の比較では、拍子を替えても音符の間隔を替えないことを優先する。
6/8拍子のドラムを作る
一小節を八分音符六つに分け、順に1、2、3、4、5、6と目印を付ける。ハイハットは六つすべてに置き、1と4を少し強くする。キックを1、スネアを4へ置けば、大きな拍の前半と後半が見えやすくなる。まず一小節を四回繰り返して聞いてみよう。
この配置では、1から3で一つ、4から6でもう一つのまとまりになる。強さの差を付けすぎる必要はない。ハイハットの音源によってはベロシティで音色も変わるため、数字の差よりも耳でまとまりを確認する。音を増やす前に、二つの大きな動きに合わせて体を動かせるかを試したい。
次にキックを6へ一つ追加する。次の小節の1へ向かう予告になり、同じ基本形でも前へ進む感じが生まれる。追加後に拍の位置が分からなくなったなら、いったん元へ戻して1と4を確認する。複雑さを増やすことより、基準を保ったまま変化させることが練習の目的である。
3/4拍子へ同じ素材を移す
3/4拍子の比較用パターンでは、同じ六つのハイハットを置き、1、3、5にまとまりの頭を作る。キックを1、軽いスネアやリムを3と5に置くと、三つの四分音符が聞き取りやすい。最初の6/8拍子と交互に再生し、音数が同じでも区切りが変わることを確かめる。
ただし、スネアの配置だけで拍子が必ず決まるわけではない。メロディーや和音の変化が別のまとまりを強く示すと、違う感じ方になることもある。ドラムだけで比較した後、同じコードを足した状態でも聞く。各パートがどの拍を示しているかを意識するのである。
DAWの拍子記号だけを6/8から3/4へ替えても、MIDIの位置が同じなら音の印象は変わらない場合がある。小節線の表示を変えることと、演奏の重心を変えることは別である。数値の設定が完了したことを、リズムが完成したことと取り違えないようにしたい。
ベースとコードで大きな拍を支える
6/8拍子のベースは、まず1と4にルート音を置く。両方を八分音符三つ分伸ばすと、大きな拍ごとに支える形になる。コードも同じ場所で鳴らしてみよう。Cの小節とAmの小節を交互に置くだけでも、拍子の感じ方を確かめる練習としては十分である。
コードをアルペジオにするなら、C、E、Gを1、2、3へ置き、4、5、6にも同じ並びを置く。三音の繰り返しが二回となり、大きな拍のまとまりを補強できる。同じ六音を3/4で使う場合は、二音ずつの強弱を付けるだけでも別の流れになる。音程とアクセントの関係を聞き比べたい。
慣れてきたらベースの4を休ませたり、コードの最後の音を伸ばしたりする。すべての楽器で1と4を強く鳴らし続ける必要はない。どれかのパートが基準を示していれば、他のパートは自由に動きやすくなる。最初は基準が消える変更を一度に重ねないことが重要である。
メロディーを歌って確認する
練習用に、最初の大きな拍でC、D、Eと動き、二つ目の大きな拍でGを伸ばすメロディーを作る。前半の三つの音と後半の長い音を歌ってみると、六つを均等に数える場合よりフレーズの形が見えやすい。高いGへ到着する場所が4にあることを意識する。
次に同じ音程を3/4の二つずつのまとまりへ置き直し、短い音と長い音の配分を変える。旋律の材料が同じでも、どこへ到着するかで表情が変わる。歌いにくい場合は拍子の設定を疑う前に、音符の長さと呼吸の場所を確認したい。
メトロノームが細かく鳴りすぎて分かりづらいときは、大きな拍を示す別のクリック音をMIDIで作る方法もある。6/8なら1と4、3/4なら1と3と5へ置く。通常のメトロノームと混ぜず、この補助音だけで曲を再生すると、狙ったまとまりを聞き取りやすい。
四小節を作って変化を付ける
最後にC、Am、F、Gを一小節ずつ並べ、三小節目までは基本形、四小節目だけ最後の三つを細かく動かす。フィルを入れる前に、次の一小節目へ自然に戻るかを確認する。三連符風に聞こえるからといって、小節末へ無制限に音を足さないようにしたい。
完成した二つの版には、拍子だけでなくテンポの基準も書き残す。「6/8、四分音符90、一小節約2秒」のように記録すれば、後で開いた際にも比較条件が分かる。設定と耳の両方で確認する習慣は、別の拍子へ挑戦する際にも役立つのである。
参考資料
練習用ファイルは二つの拍子ごとに分けて保存し、同じ名前の音源を使うと比較を続けやすい。最後にドラムを消してベースと旋律だけでも再生し、どのまとまりが残るかを確かめる。拍子を支えている楽器を聞き分ける練習にもなるのである。
単純拍子と複合拍子の違いは、Open Universityの音楽理論教材で確認できる。基本を理解した上で、まず六つの八分音符を三つずつ、次に二つずつまとめて聞くことから始めたい。
ドラムの細かな強弱は当サイトの打ち込みドラムを自然にする記事も参考になる。本記事の練習では、強弱を付ける前に拍のまとまりを決める。拍子記号、音符の位置、耳で感じる動きを一致させることが、新しいリズムを使いこなす第一歩である。

