FM音源でベルの音を作る:比率と変調量から始める音色づくり

金属のベルと二つの波形を使ったFM音作りのイメージ blog

ベルのように金属的な音を作りたいとき、FM音源は有力な選択肢である。ただし、最初から多数のオペレーターを使うと、どの設定が響きを変えているのか分かりにくい。二つの正弦波だけで始め、音程の比率と変調の強さを順番に変えると、仕組みを耳で捉えやすくなる。

本記事では、FM方式の基本的な音源で短いベルを作る手順を整理する。特定の機種の名機プリセットを再現するのではなく、自分の曲に置ける音を一から作る練習である。前回の減算方式とは違い、明るい材料を削る前に、変調によって新しい成分を作る点に注目したい。

キャリアとモジュレーターを分けて考える

FMでは、一方の発振器がもう一方の発振の仕方を変える。最終的に聞こえる側をキャリア、変調を与える側をモジュレーターと呼ぶ。FMシンセとして販売される音源には位相変調を使う実装もあるが、入門ではまず、直接聞こえる音と音色を変える信号を分けて理解するとよい。

オペレーターは、発振器とエンベロープなどを組み合わせた単位である。二つのオペレーターを用意し、片方がもう片方を変調する接続にする。接続方法を選ぶ図はアルゴリズムと呼ばれることが多い。並列に音を足す接続では、同じつまみを触っても今回の練習と違う結果になる。

最初はモジュレーターの量をゼロにし、キャリアの正弦波だけを聞く。リバーブ、コーラス、歪みもオフにする。変調していない状態の音が基準になるためである。何も聞こえない場合は、キャリアが出力へつながっているか、音量エンベロープが閉じていないかを確認する。

同じ音を鳴らして比較条件を決める

練習用のMIDIでは、中くらいの高さのCを一秒程度鳴らし、その後に二秒程度の空白を置く。次にGも同じ長さで鳴らす。短すぎるノートでは音色の減衰が分かりにくく、連打では残響が混ざるため、最初は一音ずつ聞ける間隔が必要である。

出力は小さくしておく。変調量や比率を変更すると、音色だけでなくピークや聞こえる大きさも変わる。変更後に音量をそろえて比較することで、単に大きくなった音を良いと選びにくくなる。ベルの高い成分が強くなった場合も、出力を下げてから響きを判断したい。

音源が鍵盤に追従する周波数比を扱えるなら、固定周波数モードを一度外す。鍵盤を替えても同じ比率で変調される条件にすると、メロディーに使ったときの変化を確認しやすい。固定周波数も有用だが、比率の違いを学ぶ最初の実験では比較する変数を減らすのである。

整数比でまとまりを聞く

キャリアの比率を1、モジュレーターを1に設定し、変調量を少しずつ増やす。正弦波の滑らかな音に複雑さが加わっていく。次にモジュレーターを2、3へ替え、同じ程度の変調量で比べる。整数比では共通の基音に対してまとまりのある成分が生じやすいが、比率によって聞こえる音程感も変わる。

比率1対2とは、モジュレーター側の基準周波数がキャリア側の二倍になるという意味である。二つの音をそのまま混ぜて和音にする操作とは違う。音源の表記が逆になっている場合もあるので、どちらがキャリアかを確認してからメモを残したい。

比率を変えたら、モジュレーターの量をいったん下げて再調整する。同じ数値でも比率によって印象は違うためである。明るさが足りないからと最大まで上げると、音程感が薄れたり耳に強い音になったりする。必要な変化が聞こえる範囲で、一つずつ比較するのである。

非整数比で金属的な成分を作る

ベルの響きを探すときは、モジュレーターの比率を2.5など整数ではない値にして試す。整数比とは異なる成分の並びになり、金属的な印象を得られる場合がある。ただし、2.5にすれば必ず鐘になるわけではない。変調量、音域、エンベロープが同時に響きへ影響するためである。

比率1対2と1対2.5を同じフレーズで聞き比べ、音程の中心がどれくらい保たれるかを確認する。変調量が大きいと、鍵盤上のCを押していても別の高さに感じることがある。曲に入れる際はチューナーの表示だけでなく、コードやメロディーと同時に聞くことが必要になる。

ここでは比率を二つか三つに絞り、候補を保存する。小数点を無作為に動かし続けると、変化は多くても使える音を見失いやすい。「整数比でまとまる版」「非整数比で金属感を出す版」のように役割を記録すると、後から選び直しやすくなるのである。

キャリアの減衰でベルの長さを決める

ベルは一般に発音直後が大きく、その後に減衰していく。キャリアの音量エンベロープはアタックを短くし、サステインを低くして、ディケイで余韻の長さを作る。まずディケイを一秒前後にして短いベルを試し、曲のテンポに合わせて長さを変えるとよい。

鍵盤を早く離すと途中で切れる音源では、リリースも確認する。長く鳴らしたい音を、短いノートと短いリリースで作ることはできない。ノートの長さを伸ばす方法と、離鍵後に音を残す方法を区別し、どの演奏でも意図した減衰が続くように調整するのである。

音の終わりが重なりすぎるなら、リバーブを減らす前に音源自体の減衰を短くする。エフェクトを掛けていなくても、長いキャリアの余韻が次の音へ重なることがある。音色を作る段階と空間を加える段階を分けることで、長さの原因を確認しやすくなる。

モジュレーターの減衰で明るさを動かす

次にモジュレーターにも短いアタックと減衰を設定する。発音直後は変調が強く、時間とともに弱くなると、複雑な音の頭から比較的滑らかな余韻へ変わる。キャリアよりモジュレーターを早く減衰させると、ベルらしい明るさの変化を作りやすい。

音量が下がっているのか、音色が落ち着いているのかを聞き分けたい。キャリアを長く保ち、モジュレーターだけ短くすると、変調の変化が分かりやすい。反対に両方を同時に短くすると、どちらが効果を生んだか判断しづらい。片方ずつ変更することが重要である。

例えばキャリアの減衰を二秒程度、モジュレーターを0.3秒程度にして比較する。これは正解値ではなく、違いを大きく聞くための実験条件である。響きが硬すぎるなら変調量を下げ、音の頭が鈍いならモジュレーターのアタックを短くするなど、原因に対応した変更を行う。

ベロシティで表情を付ける

音が決まったら、ベロシティをモジュレーターの量へ少し割り当てる。強く弾くと明るく、弱く弾くと丸くなる表情を作れる。音量にもベロシティを使う場合は、変調量と同時に大きく変わりすぎないようにする。弱い音が聞こえず、強い音だけ鋭くなる設定では演奏の幅が狭くなる。

低い音、中くらいの音、高い音をそれぞれ試す。中音域で良いベルでも、高音域では強い成分が目立つことがある。必要なら音域に応じて変調を減らすが、まずは使うメロディーの範囲に絞って調整してもよい。すべての鍵盤で同じ印象を保つことが、曲に使う条件ではない。

最後に短い旋律を作り、音の隙間を聞く。単音で美しい長い余韻も、速いフレーズでは重なって濁る場合がある。音程、減衰、変調量の順に戻って調整し、その後で必要なリバーブを少量加える。エフェクトを増やす前に、音源自体の輪郭を完成させたい。

参考資料と設定の残し方

FMの比率やエンベロープの具体例は、Abletonの音源リファレンスのOperatorの項目で確認できる。本記事の練習は、同様の接続と調整ができる他のFM音源にも応用できる。

保存時はキャリアとモジュレーターの比率、接続、減衰の違いをメモする。当サイトのプラグインに関する記事も音源選びの参考になる。二つのオペレーターで変化を聞き分けられれば、数を増やす前にも、自分の曲に合うベルを作る手掛かりは十分に得られるのである。

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