半音の間にも音を置く:微分音とスケールチューニング入門

通常の鍵盤の間に細かな音程を配置した微分音のイラスト blog

一般的なDAWの鍵盤では、一オクターブが十二の半音へ分けられている。しかし音の高さは、その十二個だけに限られない。半音より細かな間隔を使ったり、各音の位置を別の比率へ調整したりすると、普段とは違う旋律や和音を探せる。微分音やスケールチューニングは、そのための入口になる。

ここでは既存の曲を一度に別の音律へ変えるのではなく、二つの音の比較と短い旋律から始める。目的は珍しい設定を読み込むことではなく、音の間隔と鍵盤の対応を理解し、再現できる形で保存することである。音源の対応方式によって手順が異なるため、まず一つの音源で試したい。

半音を細かく見る

12平均律では一オクターブを十二等分し、一半音を100セントとして表す。一オクターブは1200セントである。50セントはその半音の半分に当たるが、周波数を一定Hzずつ足す意味ではない。音程は周波数の比率で考えるため、同じ50セントでも低音域と高音域でHzの差は異なる。

最初は一音を基準として複製し、片方を50セント上げて交互に聴く。次に同時に鳴らし、二音の関係を確認する。近い音を重ねることでうなりを感じる場合があるが、その様子は音色と音域にも依存する。ピッチの差を聴く実験では、強いコーラスやランダムなデチューンを外しておく。

微分音と音律変更を同じ意味にしない

微分音という言葉は、通常の半音より細かな音程などを扱う文脈で使われる。一方、音律の変更には、一オクターブの音数を十二のまま保ちつつ各音の位置を変えるものもある。二十四等分だけが選択肢ではなく、等分ではない配置や、オクターブ以外の周期を扱う体系も存在する。

最初の練習では範囲を絞り、一オクターブを二十四等分した場合を考える。各段階は50セントとなるが、通常の鍵盤の一つ隣が必ずその一段階へ対応するとは限らない。音律ファイルと演奏用の鍵盤配置は別の情報として扱われることがあるため、実際にどの鍵で何が鳴るかを確認する必要がある。

音源の対応方式を調べる

音源内で各音を調整できるもの、Scala形式などのファイルを読み込めるもの、DAW側のチューニングへ追従するものなど、方法は複数ある。MIDI Tuning Standardやノートごとのピッチ制御へ対応する場合もあるが、すべての音源が同じ方式に対応しているわけではない。

通常のピッチベンドは、同じMIDIチャンネル上の複数音をまとめて動かすため、一つの和音の各音を別々に調整したいときには制約がある。単音の旋律なら試せても、和音では意図通りにならない場合がある。対応方式を確認し、必要な場合はノート単位で音高を扱える経路を使う。MPE対応という表示だけで、任意の音律が必ず正しく再生されると決めつけない。

空のプロジェクトで始める

普段の曲とは別のプロジェクトを作り、対応する音源を一つだけ立ち上げる。ドラム、ループ素材、他の音源はまだ入れない。音律を変更しても既存のオーディオ素材の音程が自動で適合するとは限らず、複数の方式が混ざると違いの原因を把握しにくくなるためである。

最初の状態を保存し、変更後の状態も別名で保存する。元の12平均律へ戻す操作を先に確認しておくと、試行錯誤を進めやすい。音律を読み込んだ後は一音ずつ弾き、音が飛ぶ、重複する、想定した音域にならないなどの挙動がないか確認する。プリセットの名前より実際の出音を基準にしたい。

鍵盤と音高の対応を記録する

二十四等分を連続した鍵へ割り当てる方式では、一オクターブ進むために二十四段階を使う。普段の十二鍵分を上がっても、元と同じ一オクターブになるとは限らない。別の方式では通常の音に近い鍵へ配置することもある。手元の鍵盤の形を、そのまま音程の距離と考えないことが重要である。

まず基準音、半音相当、完全五度に近い位置、一オクターブの位置を探し、メモする。DAWの表示が変わる場合は、その表記も確認する。チューナーが12平均律だけを前提としていると、すべてを音程のずれとして表示することがある。表示の基準と、採用した音律の基準を区別して読む必要がある。

短い旋律に一つだけ新しい間隔を入れる

最初からすべての音を細かく動かすより、通常の旋律の一か所だけに中間の音を加える方が違いを聴き取りやすい。二つの音の間を通る短い装飾音として使い、次にその音を長く伸ばした版を作る。通過する場合と、落ち着く場所として使う場合では役割が変わる。

比較用の元旋律を残し、リズムと音色をそろえて再生する。単なる演奏の音程ずれとして聞こえるか、新しい旋律の一部として聞こえるかは、前後の文脈にも左右される。一回だけ突然出すより、同じ間隔を別の場所でも使うことで、その曲の語彙として認識しやすくなる場合がある。

和音は二音から試す

新しい音律で三和音をいきなり鳴らす前に、基準音ともう一音だけを重ねる。どの間隔でうなりが少なく感じられるか、どの間隔で緊張が強いかを確認する。音色の倍音構成によって印象が変わるため、サイン波だけで判断した後に、実際に使う楽器でも試したい。

ある音律で一つの和音が澄んで聞こえても、別の根音へ移したとき同じ関係になるとは限らない。等分音律と、特定の比率を使う配置では移調の性質も異なる。すべての調で同じ形が使えると仮定せず、作る曲の進行を実際に鳴らして確認する。評価の単位を、一つの和音から曲の流れへ広げる工程である。

複数音源の基準をそろえる

二つ目の音源を加えるときは、同じ音律名だけでなく基準周波数、鍵盤の対応、ピッチベンド範囲なども確認する。方式によって必要な設定が違う。片方だけ異なる範囲でベンドを解釈すると、同じMIDIから違う高さが鳴る場合がある。まず同じ一音をユニゾンで鳴らし、対応を確認したい。

Ableton Liveのチューニング機能にも、対応する音源やプラグイン側の条件がある。マニュアルに指定された方式と設定を確認し、非対応の音源を混ぜたまま結果を判断しない。ドラムのように通常の鍵盤配置を保ちたいトラックは、チューニングを除外できる機能があるか確認する。全トラックへ同じ処理を強制する必要はない。

録音済みの素材との関係を見る

すでに録音されたギターやボーカルは、チューニングファイルを読み込むだけでは新しい音律へ変わらない。必要に応じて演奏し直す、個別に編集する、元の音律との混合を意図的な表現として扱うなどの判断が必要になる。まず打ち込みだけの小さな編成で考えると、素材の整合を取りやすい。

一方で、ドラムやノイズなど音程の曖昧な素材を組み合わせる方法は試しやすい。ただしチューニングされたキックやタムには明確な高さを感じる場合もある。楽器名だけで無関係と決めつけず、実際の響きを確認する。新しい音律を使うときも、通常の編曲と同じく各音の役割を聴くことが必要である。

文化的な音楽体系を単純化しない

特定地域の音楽で使われる音程や旋法は、ファイルを読み込むだけで再現できるものではない。旋律の動き、装飾、音の取り方、演奏慣習などが結び付いている。音律の名前を選んだから、その伝統的な音楽を演奏できたと説明するのは避けたい。

本記事の練習は、自分の制作環境で音の間隔を探索するためのものである。特定の音楽文化を学びたい場合は、実際の演奏や専門的な解説へ進む必要がある。音の位置を変える実験と、音楽体系を理解する学習を分けることで、技術を面白さだけで消費せず、より深く使えるようになる。

音律と音声を一緒に保存する

完成した短い旋律は、MIDIだけでなくオーディオとしても保存する。通常のMIDIファイルだけでは、音律や鍵盤配置など必要な情報がすべて伝わらない場合がある。使用したチューニングファイル、基準音、音源名、対応方式、設定を記録し、他の環境でも何を意図したか分かる状態にする。

微分音の制作は、普段の半音の間へ適当に音を増やすだけの作業ではない。音の距離を聴き、中心や帰着点を作り、演奏用の配置を理解する必要がある。二音から始め、短い旋律へ進み、必要な情報を保存する。この順序なら、未知の響きを再現できる音楽の材料として扱える。

音色を固定して間隔を聴く

新しい音律を試すときは、音色も同時に変えたくなる。しかし最初の比較では、揺れの少ない持続音を一つ選び、同じ音色と音量を保つ方が音程差を把握しやすい。低い音を固定して、その上の音だけを少しずつ変える。二つの音が落ち着く感じ、ざらつく感じ、間に揺れが生じる感じをそれぞれ短く録音して比べる。

次に、同じ間隔を低い音域と高い音域で試す。音程の比率が同じでも、音色の倍音や再生環境によって印象は同じにならない。特定の音域で気に入った響きが見つかったら、それを曲の中の役割へ結び付ける。例えば背景に伸ばす二音として使うのか、旋律の通過音として短く使うのかで、必要な安定感は変わる。

比較用ファイルには、音律名だけでなく基準音と音源側の設定方式も残す。ピッチベンドを用いた例ならベンド幅、調律ファイルを用いた例ならファイル名を記録する。耳で選んだ結果と再現に必要な情報を一緒に保存すると、偶然見つけた響きを後から作品へ戻せる。未知の音程を大量に並べるより、気に入った一つの間隔を使って短いフレーズを完成させる方が、音楽上の可能性を具体的に判断しやすい。

参考資料

Ableton:Using Tuning SystemsとAbleton Tuningを参照した。対応音源やピッチ制御の条件は、利用するDAWと音源の組み合わせで確認する。

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