音を均等に散らすとリズムになる:ユークリッドリズムの実践

円周に音のタイミングを配置したユークリッドリズムのイラスト blog

ドラムを打ち込むたびに、同じ位置へ音を置いてしまう。そんなときは、先に発音する回数を決め、それを決まった数のステップへできるだけ均等に分配する方法を試せる。ユークリッドリズムは、音数と周期からリズムの候補を作る考え方である。偶然に任せて点を置く方法とも、すべての音を同じ間隔に並べる方法とも少し異なる。

ここでは専用プラグインを必須とせず、八つの入力位置へ三つの音を置くところから始める。パターンを回転させ、他のドラムへ重ね、最後は自分の曲に合う形へ編集する。生成されたものをそのまま採用するのではなく、候補を作って選ぶための道具として使いたい。

ステップ数と発音数を分ける

ステップとは、時間を区切った入力位置である。八ステップの中で三回鳴らすなら、八つの枠に三つの発音を配置する。同じ三回でも、最初の三枠へ固めるのか、全体へ散らすのかでリズムは変わる。ユークリッドリズムでは後者のように、間隔の偏りを少なくする配置を考える。

八は三で割り切れないため、すべての間隔を同じステップ数にはできない。そこで循環する発音間隔を3、3、2とした配置を作る。位置を1から8とすると、1、4、7で鳴らす形である。最後の7から次の周期の1までが二ステップになる点に注意したい。画面の端で切って考えず、円としてつながる周期を想像する。

八ステップを実際に入力する

4/4拍子の一小節を八分音符で区切り、短い打楽器を位置1、4、7へ置く。音が鳴る位置をX、鳴らない位置を点で書くと「X・・X・・X・」になる。最初は同じベロシティ、同じ長さで入力する。音色はカウベルやウッドブロックなど、立ち上がりの分かりやすいものが扱いやすい。

メトロノームを鳴らして繰り返すと、通常の四分音符の拍に対して位置4と7がどう重なるかを確かめられる。音の個数は三つだが、三連符を入力したわけではない。三連符の三等分と、八つの等間隔な枠へ三音を分ける方法は異なる。この違いを曖昧にしないことが、後の応用を理解する土台になる。

回転で重心を変える

発音の配置を一ステップ後ろへ回転させると、位置2、5、8になる。さらに一つ進めれば位置3、6、1となり、最後を越えた音が冒頭へ戻る。単にクリップ全体を遅らせて先頭に無音を増やす操作とは違い、周期の長さは保ったままである。専用ツールではRotationやOffsetといった名称が使われることがある。

三つの版を同じドラムの上で聴き比べる。キックと同時に鳴る版、スネアの前へ寄る版など、伴奏との関係が変わる。発音数や音色を変えていないのに印象が動くところが、この練習の面白さである。好みの位置が見つかるまでは、アクセントやスウィングを付けずに比較すると判断しやすい。

同じ枠で音数を変える

八ステップのまま、発音数を二つ、三つ、四つへ変えてみる。二つなら半周ずつ、四つなら一つおきという分かりやすい配置になる。三つのときだけ間隔が同じにならないことを聴けば、割り切れる場合と割り切れない場合の差を体感できる。常に珍しいリズムが出るわけではない点も理解しておきたい。

音数を増やすと派手に聞こえやすいが、主旋律の隙間が減る。密度を評価するときは単独再生だけでなく、歌やリードを戻して聴く。曲が静かな間は二音、展開部分では三音というように、発音数自体を構成の材料にできる。ただし変更箇所を小節頭へそろえると、最初の実験では違いを把握しやすい。

十六ステップへ広げる

次に一小節を十六分音符の十六ステップとし、五音を配置する。練習例として位置1、4、7、10、13を使うと、循環する間隔は3、3、3、3、4となる。これは回転位置を含めた一例であり、ツールによって見た目の始点が異なる場合がある。音数と周期が同じでも、最初の音の位置まで一致するとは限らない。

八ステップ三音の版と比べる際は、どちらも一小節に収めてテンポを共通にする。ステップ数だけを増やして、一ステップの長さを八分音符のままにすると、周期も二小節へ伸びる。ステップ数、ステップの音価、周期の実時間は別の設定である。画面の点の数だけでなく、小節線との関係も確認する。

土台のドラムはシンプルに保つ

四分音符のキックと二拍目・四拍目のスネアを用意し、生成したパーカッションを小さく重ねる。主役のビートを保ったまま、新しい位置に音を散らせる。最初からキック、スネア、ハイハットのすべてを別の生成パターンへ変えると、どの層を基準に聴けばよいか分からなくなりやすい。

重なりすぎる位置は、どちらかの音を弱くしたり、音域の異なる打楽器へ置き換えたりする。生成結果を一音削ったら間違いになるわけではない。名称に忠実な形を保存しておき、曲に使う版は耳で調整してよい。計算で作った配置を、音楽の文脈へ戻す工程が必要なのである。

複数の周期を使う前に共通周期で試す

二つの打楽器を使うなら、初めは両方を八ステップにし、一方を三音、他方を五音にする。始点が共通なので、二つの関係を追いやすい。片方だけを回転させると、同時に鳴る位置や隙間が変わる。両方を同時に回転すると曲全体の位置が動くため、相互関係の比較としては分かりにくくなる。

慣れてから一方の周期を七ステップなどへ変えると、小節に対してパターンが移動していく設計もできる。ただしDAWが小節頭で再スタートする設定なら、意図した長い循環にならない場合がある。自由に走る周期と、小節ごとのリセットを区別する。複雑化する前に再生開始位置の挙動を確認したい。

ベロシティで音の役割を付ける

配置を選んだ後で、目印にする音だけを少し強める。たとえば八ステップ三音なら最初を強くし、残りを控えめにする。全部を同じ強さにした版も残すと、アクセントの効果を比較できる。強くした音が音色まで明るくなる音源では、単なる音量差より大きく重心が変わることがある。

さらに同じ配置を別の打楽器へ割り振ると、発音の順番から旋律に近い動きが生まれる。一音ごとに違う音色を使う前に、高低二種類だけで試すとまとまりを保ちやすい。音の位置が決まっていても、音色と強弱によってグルーヴは変わる。生成パターンを楽曲の完成形と同一視しないためにも、この段階を丁寧に行いたい。

専用ツールの設定名を確認する

Ableton LiveのMIDI ToolsにはEuclideanという生成ツールがあり、複数の声部や回転を扱える。利用条件はエディションやMax for Liveの環境に依存するため、手元にない場合は本文のような手入力から始めればよい。機能名が似ていても、Densityが発音数、密度、繰り返し数のどれを表すかは製品ごとに確認する。

生成ボタンが元のノートを置き換えるタイプでは、実行前にクリップを複製する。比較する版へ番号と設定値を付け、入力したステップ数と実際の周期も記録する。生成結果を保存してから次の設定へ進めば、よかった形を再現できない問題を防げる。専用ツールの便利さは、比較の手順と組み合わせて生きる。

伝統的なリズムとの関係を単純化しない

ユークリッドリズムの研究には、均等な分配で得られる配置と、世界の音楽に見られるリズム型との関連を扱うものがある。しかし、点の配置が似ているだけで、その音楽の演奏様式や文化的背景まで再現したことにはならない。アクセント、音色、身体的なノリ、他パートとの関係も重要である。

記事や作品の説明で特定地域のスタイルを名乗るなら、生成ツールの表示だけに頼らず、実際の音楽と演奏を学ぶ必要がある。この練習では、あくまで限られたステップへ音を分ける作曲上の発想として利用する。数学的な方法で候補を広げ、その候補にどんな意味を与えるかは制作者が判断する。

四小節の完成形を選ぶ

一小節目は基本形、二小節目は同じ形、三小節目は回転した形、四小節目は一音を休む形にする。この程度の変化でも、生成パターンを機械的に繰り返すだけとは違う区切りが生まれる。最後にキックとスネアを外しても、パーカッションの並びだけで四小節の関係が分かるか確認する。

ユークリッドリズムは、リズムを自動的に良くする保証ではない。いつもの手癖から離れた候補を、少数の条件から作れる方法である。ステップ数、発音数、回転の三つを順番に試し、曲の中で必要な形を選ぶ。その手順を覚えると、空白を埋めるだけの打ち込みから、密度と配置を意識した制作へ進める。

回転を選ぶための小さな比較表を作る

同じ三音のパターンを三つ複製し、回転なし、一ステップ、二ステップの版を並べる。各版の下に同じキックを置き、キックと重なる音の数、裏側へ出る音の位置、次の頭へのつながりを短くメモする。どれが珍しいかではなく、曲で不足している位置を埋めるかを基準に選ぶと、生成を実用的な判断へつなげられる。

選んだ版を一小節だけでなく、四小節の主旋律へ重ねる。旋律が休む場所では心地よくても、言葉が詰まる小節では邪魔になる場合がある。その小節だけ一音を削るか、音量を下げるなど、局所的に整える。基本形を全曲へ機械的に適用せず、生成した配置を素材として編集することが、完成度を上げる最後の工程になる。

参考資料

Ableton:MIDI Toolsと、Godfried Toussaintによるユークリッドアルゴリズムとリズムの研究を参照した。本文の入力位置は、手元のDAWで比較するために具体化した練習例である。

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