ブラス音源で三つの音を長く伸ばしただけでは、厚みは出ても、管楽器のフレーズとしての動きが乏しくなることがある。目立たせたい拍、息を離す場所、各声部の担当を決めると、同じコードでも輪郭のあるフレーズへ変えられる。
今回は二つのトランペットと一つのトロンボーンを想定し、短い三管のリフを作る。音源に演奏可能な範囲と奏法が用意されているかを確認し、大きな音で押し出す前に、発音と休み方を整える練習をする。
一度声に出してフレーズを読む
最初に一つの声部だけで、短・短・長という三つの発音を作る。例えば四分の四拍子で、一拍目と一拍目の裏に短い音、二拍目から長い音を置き、四拍目は休む。口で「タ、タ、ター」と読んで、どこで息を離すかを確かめる。
管楽器では、一つのフレーズが際限なく続く演奏だけを前提にしない方が、音楽的な区切りを作りやすい。ただし「何秒ごとに必ず息継ぎ」と固定する必要はない。テンポ、音域、強さ、奏法によって条件が変わるため、まず短いまとまりで練習する。
音符の間へ細かな隙間を入れるだけでなく、フレーズ全体が終わる休符を残す。最後の長音が残響で休符を埋めていないかも聴く。発音のない時間が、次の入りをはっきりさせる場合がある。
短い奏法と長い奏法を分ける
Staccato、Marcato、Sustainなどの名称がある場合は、同じ音高で切り替えて比較する。短いノートをSustainへ入力した版と、短音用の奏法を選んだ版では、音の頭や余韻が違う場合がある。ブラス音源の奏法には複数の選択肢があり、Spitfire Audioの製品比較表でも具体例を確認できる。
最初の二音は短く切る奏法、三音目は長く支える奏法として試す。アクセントを付けたい音だけ別の奏法へ替える方法もある。名称から想像するだけでなく、その音源で録られた発音を聴いて選ぶことが大切である。
ベロシティやMIDI CCが音量だけを変えるのか、演奏の強さやレイヤーを変えるのかも確認する。強く入力した音で音色まで鋭くなるなら、全ての音を最大値にするより、中心の音を選んで強さを配分したい。
三つの声部に担当を付ける
一番上のトランペットに、覚えてほしいリフを担当させる。二つ目のトランペットは和音の中ほど、トロンボーンは低い支えを担当する。三声を同じ大きさで目立たせるのではなく、上のリフが追える状態から他の声部を加えていく。
Cの和音なら、下からソ・ド・ミの配置を一つの候補にできる。上のミが主役なら、その動きを先に作り、下の二声は和音を支える短い動きにする。実際の音域は音源の収録範囲へ合わせ、低すぎるトランペットや高すぎるトロンボーンを無理に使わない。
三管が同じリズムでそろって鳴る場面と、上の一声だけが先に入る場面を作る。前者はまとまりのある合図、後者は旋律の入口として比較できる。三つのトラックを常に同じMIDIの複製にしなくてもよい。
コードが変わるときは移動量を見る
CからFへ進むなら、各声部を最も近い音へ動かした版を作る。先ほどのソ・ド・ミから、ラ・ド・ファへ進めば、中央のドを残しながら上下の声部だけを動かせる。配置の選択は複数あり、これが唯一の正解ではない。
次に、上の声部が大きく上がる版を作る。滑らかな移動と、主旋律を押し出す移動は目的が異なる。コード名を守っているかに加え、リフの方向が聞こえるかを比べる。各声部を単独で再生すると、不意に大きな跳躍を作っていないかも確認できる。
低い声部へ多くの構成音を密集させると、リフの輪郭が見えにくくなることがある。三管の厚みを増やすために、さらに全声部をオクターブで複製する前に、三声だけで役割が伝わる配置を探す。
そろえる場所とばらつかせる場所を選ぶ
三管のまとまったアクセントでは、ランダムに開始位置をずらすと合図がぼやけることがある。まずそろえた状態で発音の輪郭を作り、音源の立ち上がりの差を聴く。必要な調整は、偶然のばらつきを増やすより、聞こえる開始を合わせる目的で行う。
一方、長音の終わりをすべて同時に切ると、機械的な印象になる場合もある。短いリフの頭はそろえ、長音の終わりは少し違わせる版を作ってみる。どこをそろえることが曲に必要なのかを決めてから変更する。
二小節のリフを三段階で組み立てる
最初は上のトランペットだけで、一小節目の一拍目とその裏に短いミ、二拍目から長いソを置き、四拍目を休ませる。二小節目は同じリズムでファ、ファ、ラと鳴らす。CからFへ進む伴奏を付け、上声だけでもリフの形が分かるかを聴く。ここで輪郭が曖昧なら、三管に増やす前に長短や休符を調整した方がよい。
次に、短いミの下へドとソ、短いファの下へドとラを加える。長い音の部分は、上声のソやラを支える配置を別に選んでよい。すべての瞬間を同じ和音の転回形に固定するのではなく、目立つ上声がどこへ動くかに合わせて下の二声を作る。入力後は、一声ずつ再生して旋律としての流れも確認する。
最後に、二小節目の最初の短音だけを少し弱くした版を作る。一小節目の問いに対し、二小節目が応答するような強さの配分を試すためである。三管全部を同じベロシティへそろえる版と、上声を中心にした版も比較する。人数による厚みだけでなく、二小節のどこが中心かを聞かせることを目標にする。
アクセントと長さを別の操作として扱う
強い音を作りたいとき、ベロシティを上げるだけでは音源の鋭いレイヤーへ変わり、狙いより硬くなる場合がある。まず強さを保ったまま音を少し短くし、輪郭がはっきりするかを聴く。次に長さを元へ戻して強さだけを上げる。二つの結果を比べれば、必要なのが切れ味なのか、演奏の力強さなのかを判断しやすい。
長音の始まりだけを強調し、その後を抑える形も試せる。対応するダイナミクス操作で短く膨らませてから下げれば、ずっと最大音量で伸ばす版とは違う表情になる。ただし、用意されたMarcatoなどの奏法自体に強い頭が含まれる場合は、さらに大きな山を重ねる必要がないこともある。音源の元の発音を聴いてから制御を足したい。
音の終わりも、急に切る版と、少し弱めて終える版を用意する。短い合図にはそろった切れ目が合い、柔らかな応答には減衰が合う場合がある。ブラスらしさを作るために必ず全員をばらつかせるという考え方ではなく、そのフレーズでどの終わり方を聞かせたいかを先に決めることが重要である。
実音と譜面上の音名を混同しない
DAWのピアノロールで鳴らしている音と、移調楽器の譜面に書く音は一致しない場合がある。今回の練習は、実際に聞こえる音名でコードを組み立てるものとして扱う。音源を使うだけなら、まず鍵盤のドを入力したときに何が鳴るかを確かめ、パッチ側の移調設定がないかを見る。楽器名だけでノートを一律に動かさない方がよい。
演奏者へ楽譜を渡す段階では、使用する楽器の調性と記譜方法に合わせて譜面を整える必要がある。制作中の三管のバランスを決める作業と、演奏用の譜面を作る作業を分ければ、同じ音を二重に移調するミスを避けやすい。まず実音で和音の関係を確認し、譜面ソフトの移調表示はその後で点検する。
また、サンプルが鍵盤上で鳴る範囲と、実際の奏者が無理なく繰り返せる範囲は同じとは限らない。高い音が一瞬鳴る例と、高音を強く長く続ける例では要求が異なる。実演も考えるなら、音域表だけで決めず、奏者とフレーズを確認する。打ち込みの練習でも、極端な音域を常用しない版を基準にすると配置を学びやすい。
三管を一つの空間に置く
三つの音源を重ねた際、一つだけ遠く、残りが近く聞こえると、同時に演奏しているまとまりが弱くなることがある。まず各パッチに含まれる部屋の響きやマイク設定を確かめる。追加のリバーブを増やす前に、元の音の距離感がそろっているかを聴くと、過剰な残響で輪郭を失うことを避けやすい。
共通のリバーブへ送る場合も、短いアクセントの後に尾が長く残り、次の休符を埋めていないか確認する。三管が同時に強く鳴ると、単独で調整したときより残響が目立つ場合がある。ソロではなく三声をまとめて鳴らし、長さと送る量を調整する。休む場所が聞こえることも、ブラスのリズムを伝える条件になる。
左右の配置は、上声を聞き取りやすくする補助として使える。ただし、三管を極端に離しただけで音の衝突が解消したと思い込まないようにしたい。中央へまとめた状態でもリフを追えるかを確認し、必要なら下声の音域や長さを変える。アンサンブルのまとまりは、音量と音符の役割が整理されているほど作りやすい。
仕上げに、最初の二小節をドラムのない状態、ドラムだけを加えた状態、歌も入れた状態で順に聴く。どの段階でリフが読みにくくなるか分かれば、直す相手を絞れる。単独では力強い三管でも、曲の中では音を減らした方が効果的な場合がある。全員が鳴る瞬間を大切にするために、鳴らさない拍も選んでおきたい。
ドラムと主役の中で最終判断する
最後にドラムや歌を戻す。ブラスのアクセントがスネアと同じ瞬間に大きく重なるなら、片方を短くするか、ブラスの担当拍を変える。伴奏として入れる場面では、歌の重要な言葉の裏へ同じ強さのリフを置き続けないようにする。
完成したリフを、小さな音量でも確認する。三管の数よりも、短い音、伸びる音、休む場所が追えるかが重要である。息継ぎと発音の役割を先に決めることで、ブラスは大きな和音の塊から、曲へ応答するフレーズへ変わる。

